★旅の断片 ~中央アジア・キルギス バザールで働く人々1~
キルギスには、北部の首都ビシュケク、南部のオシュといった大きな街から山あいの小さな村まで、おおよそどこにでもバザール(市場)がある。
規模は大小様々だが、それぞれに土地特有の雰囲気があって面白い。
僕が一番印象に残っているのは、キルギス第2の都市オシュのバザール。
このバザールの特徴は、キルギス人以外にウズベク系、ロシア系をはじめとして諸民族の多彩な顔ぶれが見られること。
といっても、初めて訪れた頃は、はっきりと見分けなんてつくわけもない。
いろんな人を見て思うのはただ一つ。
「恰幅のいい、おっかさんみたいなおばさんが多い」、ということくらいのものだ。
でもそれは、僕にとってとても嬉しいこと。
こうした恰幅のいいおばさんたちのいないバザールなんてバザールじゃない、とさえ僕は思う。
恰幅のいいおばさんたちがいるだけで、なんだかバザールが活気づいて見える。
恰幅のいいおばさんが売っているぷりっとしたトマトや、焼きたてのパンなんかを見ると、つい買いたくなってしまう。
「おめさ、どっがら来た? アメリガか? イダリアか?」
まるでそんな感じで陽気に話しかけてくるおばさんたち。
「明日も来い」と言って帰り際にムギュっと抱きしめらたりすると、そのふくよかな体に埋もれたまま、僕はおばさんの体の一部になってしまったような気分になる。
そんなやりとりを歩く先々で繰り返しながら、言葉も次第に覚えていく。
そしていつのまにか、キルギスという国を好きになっている自分に気がつくのだ。